(sic)boy の音楽性を語るうえで、エモラップという言葉は欠かせない。
ロック、ハードコアパンク、またそれらのサブジャンルから引き継がれている音楽的側面において、(sic)boy は国内におけるエモラップシーンにおいて重要な役割を担っている。
Lil Peep、Juice WRLD などエモラップというジャンルを確立し世界に広めたラッパーは、影響を受けたアーティストとしてそれぞれRed Hot Chili Peppers、Escape The Fate などHip Hop 外のアーティスト名を挙げている。海外のカルチャーの中で作り上げられたエモラップは、 熟成されてから海を越え日本で流行していったが、(sic)boy はその点彼らとは全く異なる道を歩んできた。
L’Arc-en-Ciel と同名タイトルの「Heaven’s Drive」からも分かる通り、(sic)boy は L’Arc-en-Ciel の Hyde から大きな影響を受けている。高校時代は SiM やマキシマムザホルモンをカバーしていたりと、ラッパーとしては異色の音楽キャリアを歩んできた。そうして積み上げたロックサウンドはその後ヒップホップに出会うことで進化を遂げ、日本でしか生まれ得ない唯一無二のエモラップを作り上げてきた。
海外のラッパーと同じようにサウンドクラウドに楽曲をアップロードしていくと、Nick Mira が Juice WRLD に出会い「Lucid Dreams」が生まれたように、(sic)boy は KM と出会いブレイクソングを量産していく。
そして彼の活動は瞬く間に海外にも広がっていく。Wez Period、Phem に加え、日本のヒップホップにも多大な影響を与えたlil aaron とも楽曲をリリース。ただ単に海外のラッパーとコラボしたのではない。 日本で育ち、日本の音楽から影響を受け、オリジナルのエモラップを開拓してきた (sic)boy が、同時期に海外でカルチャーを築いてきたアーティストと世界同期し、文化を先に進めたという点に重要な価値がある。3 年前に lil aaron に DM を送っていた (sic)boy が、わずか数年で自身の地位を確立し、対等に渡り合えるまでに成長を遂げた点も特筆すべきであろう。
そして直近の楽曲では、(sic)boy がキャリア初期からインタビューで名前を挙げていた nothing,nowhere. とのコラボも遂に実現させている。nothing,nowhere. は 2015 年からサウンドクラウドに楽曲を投稿し、そこから大手メディアからフックアップ され、現在は ONE OK ROCK と同じFueled By Ramen から楽曲をリリースしている。(sic)boy はメイクアップした姿で世間に登場するのに対し、nothing,nowhere. は活動初期にほとんど顔を出さないなど、対照的なキャリア初期を歩んできた。ただ芯にある精神性や音楽性は共鳴していた。 日本とアメリカの全く異なる環境で育ち、それぞれ確立した音楽が今混じり合ったことに大きな意味がある。シーンを先に進めるアーティストとして、次の一手から目が話せない。
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