万能青年旅店は、1990年代に結成され、2002年に正式に命名された中国で最も有名なコンテンポラリー・ロック・バンド。当初はBlind Melonといった90年代アメリカのオルタナバンドに影響を受けるも、後にアヴァンギャルド・ロック、アート・ロック、ジャズの要素を取り入れてきた。とはいえ彼らの音楽スタイルは上記のスタイルを織り交ぜており、おいそれと、このジャンルというわけにはいかない。複雑なアレンジ、さらに詩的な歌詞で知られる彼らの楽曲は、とても「自由」なのだ。 結成当初はさほど目立たない存在だったが、2006年にアンプラグド・シングル "不万能的喜剧 "を自主制作でオンラインリリースし、バンドの認知が高まりライブ盤がブートレグでネット上に出回ると、あっという間に中国で最も高く評価された有望なロック・バンドのひとつとしての地位を確立することになった。2010年末、セルフタイトルのデビュー・アルバム『万能青年旅店』をリリースし、これが翌年には中国の音楽シーンで大きな話題となった。このアルバムは詩的で内省的でありながら緻密で力強い表現で、その時代と社会における若い人たちの感情や考えを高らかに伝えるものになっている。また、ロックのエネルギーと繊細な音の美しさが絶妙なバランスで共存しており、ほとんどの曲が今日までファンに歌い継がれているのだ。その後、バンドは様々な音楽的影響を取り入れ、2020年後半には全曲をシームレスに繋ぐコンセプトアルバムであり、セカンドアルバムである『冀西南林路行 / Inside The Cable Temple』をリリース。このアルバムは当初デジタル・レコードとして 販売されたが、初日に30万枚近いセールスを達成し、その後80万枚を突破して、中国のインディーズ音楽界で最高のデジタル・レコード・セールスとなった。 「冀西南林路行 / Inside The Cable Temple』は、ファンや音楽ライターなどから満場一致の賞賛を集めており、前作と比較しても芸術的な高みに注目が集まっている。作品はオーケストラの要素を取り入れ、音楽はより複雑になり、アート・ロックに傾倒したものになっている。社会と文明の急速な変容が個人に与える深い影響を鮮やかに描き出し、メランコリー、悲哀、不思議な色合いが混在した作品となっている。